米国の2025年の物価関連指標データとそれらを基にした利下げ観測
物価の推移
2025年前半~夏にかけて、米国の物価上昇は安定的ながらも徐々に加速する局面が見られました。以下、主なポイントです:
- 消費者物価(CPI)
年率では1〜2月が約 2.8~3.0% で始まり、その後3〜5月にかけてやや落ち着きを見せ、6〜7月で再び 2.7〜2.8% 程度に戻り、8月には **2.9%**とも観測されました。月次変化率では、特に 8月が +0.4%と上昇幅が大きく、前年月比の伸びも最高水準に近い。コアCPI(食料・エネルギーを除く)は、年間ベースで 3.0~3.2% 程度で推移し、CPI全体の変動性の中でも比較的安定的に高めの水準を保っています。 - 生産者物価(PPI, Final Demand)
PPI年率は春先には約 3.2〜3.5% の範囲であったものが、5〜6月以降やや鈍化傾向を示し、8月には 2.6% 年率にまで低下しています。月次で見ると、7月には +0.7% 近い上昇を記録する月があった一方、8月は −0.1% となり、生産側の価格上昇圧力にやや緩みが出てきていることがうかがえます。コアPPI(変動の大きい食品・エネルギーを除いた部分)でも同様に、上昇率がピークを過ぎつつある兆しがあります。 - 直近の数か月の動き(6〜8月特に注目)
- 6月:CPI全体が +0.3% 前後、PPI 年率約 2.6〜2.7%、月次 PPI は上昇。
- 7月:CPI 年率およびコア CPI 年率ともに 2.7~2.8%、PPI 年率 3.3%近くまで戻す動き。月次 PPI は比較的大きな上昇。
- 8月:CPI 全体年率が **2.9%**に上昇、月次 +0.4% と加速。コアCPI 年率も 3.1%。一方 PPI 年率は **2.6%**に低下、月次では総じて低め(−0.1%)で、生産側価格上昇の勢いに減速感。
利下げ観測との関係:物価上昇の観点から
物価指標のこのような推移を背景に、利下げ観測(つまり連邦準備制度が政策金利を下げる可能性)については以下のように整理できます:
- 利下げを判断する上で、FOMC(連邦公開市場委員会)は「インフレ率が 2%目標に収束しつつあるか」「コアインフレの持続性がどうか」「供給側のコスト上昇圧力(PPIなど)に緩みがあるか」などを重視しています。
- 上記データでは、CPIは 8月時点で再び年率で 2.9% に上昇しており、また月次変化率も +0.4% と前月比大きな上ぶれがあるため、消費者物価側のインフレ圧力は依然として侮れません。コアCPIも 3.1% 前後とターゲットをやや上回る水準が続いており、これが利下げを行うにあたり慎重な姿勢を促す材料になります。
- 一方で、生産者物価(PPI)の伸びが年率・月次ともに鈍化してきており、特に8月の月次 −0.1% は、サービス部門などでコストの上昇圧力が和らぎ始めている可能性を示しています。これは、「将来的には消費者物価にも上昇圧力が完全に転嫁されるわけではない」という期待を支えるデータです。
- したがって、消費者物価の上昇が目立つ一方で、生産者物価側がやや冷えを見せている点は、利下げの可能性を完全には否定しないものの、FOMC にとって「利下げ決定のタイミングや幅を慎重に見極める」必要性を強める要因となっています。